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2013年12月21日土曜日

続・ロボット「ヨブ」(on twitter @rahumj)

 食事中に吐き気に襲われた.それは昨日のツイートした,四足歩行ロボット BigDog に関する新たな悪夢的イメージが頭をよぎったからだ.

 前回のブログでは,このロボットが,フォルムやメカニクスにおいてバイオミミクリーを応用しているのは間違いないが,その制御系プログラムにおいても,モーションキャプチャー等により,やはりバイオミミクリーが応用されている可能性があると書いた.

 以上の推測が正しいのであれば,ウォルト・ディズニーがアニメ映画「バンビ」制作のために,本物の鹿をスタジオで飼い,観察したように,このロボット開発者たちは,そのモデルとなる動物を買い入れた可能性は十分あるだろう.

 
 開発者達が,様々な物理的アクシデントに対処可能なロボットを開発するためには,フォルムの検討は言うまでも無く,各モーターを同期的に制御し,可能な限り姿勢を維持するためのプログラム開発は重要だろう.

 その姿勢制御プログラム開発にあたってバイオミミクリーを応用するのであれば,突然の物理的衝撃に対し,モデル動物がどのように姿勢制御し,対処しているのかを観察記録することになるだろう.

 そのため開発者達が.3Dでモーション記録できるカメラの前にモデル動物を立たせ,実際に「蹴り」を入れ,そのよろめき方や姿勢の立て直しを記録した可能性は十分にある.そして,そのモーションデータを充実させるために,その記録行為は繰り返し行われたことだろう.

 過酷な自然環境での使用が想定される,「戦争の道具」としてロボットを開発するために,そのモデル動物を実際にそのような環境において観察し,その動作を記録するのは工学者の発想として自然だが,その「過酷」な環境下における動物実験は,おそらく,「渾身の蹴り」数百発ではすまないだろう.

 Boston Dynamics社の提供しているYouTube動画では,4足歩行ロボット BigDog をはじめとするロボットたちが,雪の中,斜面,林の中,ぬかるんだ山道,浜辺,凍った地面,石だらけの河原的な場所等の環境を歩行している

 これらのロボットたちに想定されている運用環境は単に,車両の入ることのできない厳しい自然というわけではない.それは戦場の最前線である.彼らは運搬用軍事ロボットのプロトタイプであった.そのためか,いくつかの映像においても,彼らにペイロードが課せられているようだった.

 だとすると,おそらくモデル動物の動作記録は,同様の環境において,同様のペイロードを課した状態で記録されたものと推測される.私が目撃したあの痛々しいロボットのよろめき方は,本物の動物のそれだったのかもしれない.

 戦場の最前線ではアクシデントがつきものであり,完全なサポートやバックアップは存在しえない.与えられた装備のみでミッションを完遂しなければならないケースも多いことだろう.となれば故障がつきものであるロボットに関しては,半故障状態における運用も想定しなければならない.例えば,4足中1足が壊れた場合の対処的運用である.

 その運用に対する答えを,バイオミミクリー工学者たちがどのような手法で模索するのかをイメージした時,またそれがどのような発展を見せるかをイメージした時,自分は吐き気に襲われた.

 確かに奇妙なことに, Boston Dynamics 本社のサイトには,動物の姿は全く見当たらない.獣の匂いのしない,クリーンでメカニカルなイメージで構成されている.なぜここまでバイオミミクリー応用をしながら,そのモデル動物には全く触れないのか.

 現在のところ,彼らのバイオミミクリー応用のロボット開発が,実際にはいかなる手法で行われているかは,全くベールに包まれている.自分がイメージした,そのベールの下の悪夢的光景が,単なる妄想であることを願ってやまない.

2013年12月20日金曜日

ロボット「ヨブ」 (on twitter @rahumj)

馬のように歩いていた四足の犬型(?)ロボット BigDog が,突然彼の開発者の一人に蹴られてよろめいた時,自分は激しい不快感に襲われた.彼は生命を,おそらく「羊」を虐げたのだ.

 この映像の構図は,近未来の社会における人間とロボットの関係を予型している. 
 
 被造物(ロボット)には,創造者の意図は全くわかるまい.創造者から与えられたそのミッションを,ただ実直に遂行しようと前進する彼に,なぜ創造者は自ら渾身の蹴りを入れ,そのミッションを頓挫させようとするのか.

 確かにこの動画に限って言えば,創造者は被造物(ロボット)を信頼している.その渾身の蹴りによって転倒し,彼が精魂込めて作った高価な被造物が壊れてしまうとは全く思っていない.だからこそ創造者は,彼を「試み」にあわせることができた.では何のための「試み」だったのか?

 それは被造物(ロボット)の性能を,より現実的な状況において,より現実的な手段によって,他者に証しするためであろう.Boston Dynamics 社はこのデモにより,出資者を募っていたと想像される.結局この会社は,巨大企業 Google に買い取られることとなった.

 このデモンストレーションは,使用されたロボット個体を販売するために,その性能を誇示するものではなかった.創造者が他者に証ししたかったのは,創造者の持つ卓越した技術や創意であった.ロボットの性能の現れは,言うなれば「創造者の栄光」である.

 もしそうであれば,あのロボットは,創造者の栄光のための道具にすぎない.目的が達成されればプロトタイプは,どんなに高価であろうと秘密保持のためスクラップとなるだろう.そこには創造者の被造物に対する深い愛は感じられない.

 確かに被造物がロボットではなく,自動車やTVのような一般的な工業製品ならば,愛着のようなものは感じるかもしれないが,深く愛するということはないのだろう.しかし自分は確かに,創造者に蹴られてよろめいた,あの四足のロボットを憐れに思った.彼を守りたいと思った.

 それはやはり,ロボットの中に「生命」を感じたからだ.おそらくこのロボットは,その形状や行動から,バイオミミクリーを使用しているのだろう.もしかしたらフォルムやメカニクスだけでなく,制御系プログラムにもモーションキャプチャー等によりバイオミミクリーが使用されているのかもしれない.

 その擬似生命(ロボット)は,創造者の創造意図も,被造物に対する無慈悲も知らず,ただただ,創造者から与えられたミッションを遂行するためだけに「生き」,その遂行の中で創造者によって迫害され,そして最後には創造者の手によって「殺される」ことになる.

 この(擬似)生命の物語の持つ悲惨さは,あのロボットがヨブのようにならなかったことによるのだろう.あの蹴りのシーンの後に,ヨブ記的ラストを入れてくれたのなら,自分はこんなツイートをすることもなかったはずだ.

 つまりあのロボットの創造者が神的ではなく,むしろ悪魔的であることが,この物語の後味の悪さなのだ.なるほど,この創造者は確かに人間であった.

 今後ロボットとして,またデザイナークリーチャーとして,様々な人工生命体が,人間の奴隷として創造されるだろうが,その世界は果たして創世記的な美をたたえているのだろうか?その Artificial Biosphere が創造者自身の写像であるとしたら,我々はその鏡の前で,我々の真の姿を見て愕然とするであろう.

参考ページ: