2013年12月22日日曜日

透明な病(on twitter @rahumj)

 罪は,無口で透明な病である.

 それは透明な辛子種,顕微鏡レベルのミクロの種から始まる.種は,この世の欲望を吸い上げて芽吹き,闇の放射を浴びながら,極めて速い速度で連続的成長を続け,やがては宿主を遙かに超えた透明な大木となる.

 そしてついには宿主から萌え出でたその根や枝は,貪欲に他者を捕食しながら,さらに,この世の果てへと,その勢力を伸ばしていく.

 その忌まわしい透明な巨木が,その長い沈黙を破り,彼に向かって死を語り出す時,彼はようやく,自分を飲み込んでいたその巨木を視認し,必死になって斧を探すであろうが,それは無駄である.彼はあまりにも巨木と一体になりすぎていた.

 故に彼は,あの外科医の名を天に向かって叫ぶ.すると彼を憐れんだ外科医はやってきて,誰にも出来ない手術を行い,巨木の中から彼を救い出して言った.

 「これからは定期検診を受けに来て下さい.あの種がまたは身体に入ってしまうかもしれません.私は良い顕微鏡を持っています.来ていただければ,それを使ってあなたの体内を調べて,あの忌まわしい種が身体の中に入っていないか,検査してあげましょう.この病気は,何よりも早期発見が大事なのです.」 
 

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