2013年12月23日月曜日

弁別(on twitter @rahumj)

 鳥が巣を作るほどに成長した大木を,皆で鑑賞していた.やがて,そのうちの一人がその大木の中に,妙なものを見つけた.それは一風変わった枝で,明らかに他の枝と異なる形状を持っていた.「ならばそれは,いつの間にか彼が接ぎ木した枝であろう」と言って,皆は納得し,また満足して帰っていったが,その内の一人の者は残り,その異形の枝を見つめ続けた.彼は植物学者だった.

 観察を続けた彼は,やがて奇妙な枝のあちこちに,たいへん小さな,やはり変わった形をした木の実が,いくつも付いていることに気づいた.胸騒ぎを感じた彼は,手にしていた双眼鏡を目に当て,その実をじっくり観察した.しばらくすると彼は双眼鏡を下ろし,顔をしかめ,うめくようにつぶやいた.これは彼が接ぎ木した枝ではない.ヤドリギだ.

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